(前記事の続き)
その日のうちにサイゴンに戻るため、夕方頃に発車する帰りの切符を買おうとするも、窓口も切符を買い求める人で大混雑…。いつまでたっても空く様子がなかったため、帰りはバスでいいかなと諦め、駅を離れました。お腹が空いたので、とりあえず朝ごはん!
ビエンホア駅を出てまっすぐ続く道の両側には、庶民的な食堂やカフェが立ち並んでいます。そのうちの一軒に入って、Bún Bò(ブンボー)を食べました。おばさんがとても感じのよい人で、明るく元気に、そしてテキパキと運んできてくれました。これがまた、とても美味しいブンボーで。帰り際には "Cảm ơn con nha! Bữa nào ghé lại ủng hộ nha!" (ありがとね!また来てね、ご贔屓に!)と元気いっぱいに見送ってくれました。
余談なのですが、"ủng hộ"(ウ~ンホ)というベトナム語が、私は前からなんだか好きなのです。漢字にあてはめると「擁護」を表すこの単語。「(ある意見を)支持する」とか「(ある人やチームを)応援する」という意味として使われます。日本語だと、同じ意味を表しつつその場面ごとに単語が変わるけれど、ベトナム語だとこの「ウ~ンホ」の応用範囲が広く、上記のおばさんは、「うちの店のこと、応援してね」という意味で、つまり「ご贔屓に」という意味で使っていたことになります。日本語の語彙の豊富さを感じると共に、ベトナム語のフレキシブルな柔らかさも感じるから、私はなんだか、この単語が好きなのです。
コピー屋の店先で読書に耽るおじいさん。 |
朝食を終えて歩きだすと、突然、大粒の雨が降ってきました。急いで屋根のあるお店の前で雨宿り。すると同じく雨宿りをしに、宝くじ売りの姉妹がやってきました。お姉ちゃんは中学生くらい、妹ちゃんは小学生低学年くらい、という感じかな。二人はちょっとだけ私の存在を気にする素振りをしながら、雨がやむのをじっと待っていました。
途中、妹ちゃんが雨を見て"Mưa đá?(ヒョウ?)"と尋ねました。確かに大粒だったけれど、明らかにヒョウではなく、お姉ちゃんが「何言ってんのよ」と笑い、妹に蹴りを入れてからかい始めました。ヒョウという単語の"mưa đá" (ムアダー)はmưa(雨)と đá(氷)の組み合わせでできていますが、実は đáにはもう一つ「蹴る」という意味があって、例えば"bóng đá"(ボンダー)と言えばbóng(球)+ đá(蹴る)で「サッカー」となります。
つまりお姉ちゃんは、「ヒョウって、あんたね~」と笑いながら、蹴りを入れる動作をして言葉遊びをしていたのです。 ベトナム語だからこそできるやりとりだなぁと、私も一緒になって笑いました。初めてお姉ちゃんと目が合って。だけど雨が止んだら二人はすぐに宝くじ売りに戻っていきました。一時だけでもお姉ちゃんと笑いを共有できたことが、妙にうれしかったです。
カフェを出てさらに歩いていくと、学校が立ち並ぶ区画が出てきました。短大、小学校、そして中学校。それぞれ別の組織なようで、名前も全く別。
面白かったのは、中学校。校門の前にBảng tin(掲示板)があったのですが、そこへひっきりなしにバイクで人がやってきます。貼り出された何かを一心不乱で読む人々。何だろうと思って近づいたら、中学受験の合格発表!今の時期、ベトナム全土で受験が行われていますが、連日ニュースで大きく取り上げられるのは、主に大学受験の状況。でもそうだ、ベトナムでは国公立でも中学受験があるわけで、こんな風に子どもの結果を見に来る親たちの姿に出会えるのです。
中学校の前の大通りにて。 |
バスターミナルから5番のバスに乗ります。始発がこのビエンホア・ターミナル、終点はサイゴン5区に位置するチョロン・ターミナル。途中わが家の近くも通るため、そこで下車することにしました。切符は15000ドン、列車とさほど変わらないんだなぁと思っていたら、窓を打ち付ける雨が。本当に、雨のよく降る今日この頃です。
ビエンホアの4月30日通り。旧国道一号線、とある。 |
ほんの束の間のトリップだったけれど、列車は楽しい。そして、知らない街を歩くのもやっぱり楽しい。サイゴンも大好きな街だけれど、あちこち出かけていかなくっちゃ!と思った旅でした。
From Hem
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